【ODRピックアップ】20160617 判断と決断と分析と直感と
2016年5月17日の日経新聞朝刊は、AI社長が取締役会で提案する場面をコラムの冒頭の書き出しに記しました。
書籍「戦略課長」は、コンピュータが課長として配属されてくるSF小説です。
AIだけに、膨大な蓄積データに瞬時にアクセスし、解析し、その時取りうる合理的な「判断」を出し、失敗はするもののそれも想定範囲内で、打開策を打ち出す痛快SF経済小説。ちなみに五部作で、「会計天国」、「猿の部長」、「貯金兄弟」、「販売魔女と死の眼鏡」もお薦めです。
行動経済学を判りやすくひもといてくれる「不合理な地球人」は、なぜ、人間は合理的な判断ができないのかを説明してくれています。
そこには、損をしたくないという感情や、もしかすると増えるかもしれないという欲望や、もう損しないからこれでいいという打算があります。この打算は、感情のようでもありますが、実はちゃーんと計算している合理的な判断でもあります。
これに対して感情や欲望は、実は人間だけにしかできないことでもあり、小説に出てくる戦略課長や、宇宙人ジョーンズが不思議がるところでもあります。
AIに仕事を奪われる説が聞かれます。実際のところ、データの調査や分析、収集そして判断は、おそらくAIに奪われて行くのでしょう。だから冒頭のAI社長がルワンダに支社を出す「判断」は恐らく正しい。
しかし、ルワンダに関する情報でまだ現地の人間にしか感じられない情報に重要なものがあったら、それはAI社長のアクセス範囲にはありません。いわゆるヒューミント情報。そこが人間の特権です。
AIがあろうがなかろうが、今もそれを持っているかどうかが重要。なんでも、Googleで探せる範囲ではなく、検索しても出てこないような話が人間の分野になるでしょう。
それから、判断ではなく決断が重要となります。
判断しようとしても決定できない場合が必ずあるはず。AIは、つきつめて判断するために情報収集を永遠にすることになるかもしれませんが、そうなると決定に至らない。
昔の映画「WAR GAME」で、人工知能的な自己学習のできるコンピュータ「ジョシュア」は、核戦争のシミュレーションを始めてしまい、それがスクリーンに投影されてしまい、軍はそれをホンモノと誤解。核ミサイル発射の手続に入ってしまいます。しかし、自己学習により、「どうやっても勝者がない」状態となり、ジョシュアはシミュレーションをストップします。核戦争ですから判断が下されなくてよかったのですが、戦争ではなくほかのケースで、決断しなければならない場合だとしたら、最後は決断が必要となります。そして、情報収集と分析ではない、直感力、これが人間としての重要な機能だと思います。
判断と決断と分析と直感と。
似て非なることを改めて意識します。